南北に長く、周囲を海に囲まれた日本では、春夏秋冬と呼ばれる四季のもとで、野と山と海の幸がもたらす季節の恵みを楽しむ食文化が発展しました。
また日本人は、古来より季節感を大切にしながら生活を育み、暮らしを彩っていくなかで、様々な暦を使ってきました。立春や夏至、秋分など季節の訪れを表現する「二十四節気」やより繊細に季節の移り変わりを表現した暦「七十二候」など、暦は季節を伝えるとともに農作業の目安としても利用され食文化に大きく関わってきました。
「四季のTeishoku」では、四季折々の食材が伝える季節感を楽しむことの魅力を、日本人の日常食である定食(Teishoku)で表現するとともに、現代に受け継がれる暦と食の関わりを紹介いたします。
冬の寒さが少しずつ和らぎ、春が待ち遠しい季節です。
2018年の「四季の定食」は、これまでの季節の献立に加え、千年の都として
日本文化を育んできた京都を中心に、日本各地の行事食もご紹介していきます。
四季の移ろいに美を見出す、私たちの国、日本。
そこで育まれた豊かな旬の幸をおいしくいただき、自然の恵みに感謝する。
長きに渡って受け継がれてきた、日本の食文化を探ります。
鯛をごぼうと一緒に炊いた、白いごはんが進む一品です。
香り高いごぼうに、鯛のおいしさがしみ込んでいます。
(4人分)
- 鯛 (あら)
- 1尾分
- ごぼう
- 1本
- 木の芽
- 適量
A
- 酒、みりん
- 各1/2カップ
- 濃口しょうゆ
- 大さじ4
- 砂糖
- 大さじ2
- 薄口しょうゆ
- 大さじ1
- 水
- 1/4カップ
- ❶鯛のあらは適当な大きさに切り、生臭さを抑えるために塩をふります。熱湯にくぐらせて、流水でうろこや血合いを取り除いてください。
- ❷鍋で「A」と水を煮立て、❶を入れ強めの中火で8分ほど煮ます。やや火を強めて下ゆでしたごぼうを入れ、鍋を回しながら2分ほど煮詰めます。
ワンポイント
最後に鍋を回しつつ、煮汁をすくってかけながら煮ると、きれいに照りが出ます。
異なる食感を楽しめるイカと筍を、
鮮やかな緑がまぶしい木の芽和えに。
日本酒の華やかさと白味噌の上品な
味わいを感じる季節の和え物です。
江戸時代の料理本『万宝料理秘密箱 卵百珍』の
茶巾卵に、菜の花と椎茸を添えました。
可愛らしい茶巾卵を、明るい春を感じる
おすましの具に仕上げています。
初午は2月の最初の午の日。この日は全国各地の稲荷神社で、五穀豊穣や商売繁昌を願う「初午」の祭礼が開かれます。中でも全国に3万社あるとされる稲荷神社の総本宮、京都の伏見稲荷大社には、多くの人たちが初午詣に訪れます。
伏見稲荷大社の初午は、千年以上続く古い祭りです。祭神の稲荷大神が稲荷山へ降りたとされる、和銅4年(711)2月の初午の日にちなんだ歴史ある行事です。
この日は祠に赤い幟を立てて灯明をあげ、お神酒やお赤飯、お団子や油揚げを供えます。
伏見稲荷大社には「しるしの杉」があります。
参拝した「しるし」として拝受する、商売繁昌や
家内安全を願う縁起物です。その歴史は古く、
平安時代には伏見稲荷大社の杉の小枝を折り、
それを身に着けて帰る習わしがありました。
京都市伏見区深草薮之内町68番地
京都の初午では、「いなり寿司」に「畑菜の辛子あえ」と「粕汁」を食べる習わしがあります。
日本各地で食べられているいなり寿司ですが、関西は三角形。これは稲荷山や稲荷大神のお使いであるきつねの耳のかたちをあらわしているといわれています。
京都の「いなり寿司」では、具を入れたごはんを使います。
京にんじんやごぼうに麻の実、ごま、柚子などを合わせ、食感と香りも楽しめる「いなり寿司」に仕上げます。
茶道武者小路千家家元の長女として京都に生まれ、同志社大学で美術史を専攻、陶磁器の研究に携わる。茶懐石料理の第一人者だった母に料理を学び懐石料理をベースとしつつ、自らも海外に積極的に出かけ、世界各国の食材や調理法を取り入れるなど、現代家庭でも作りやすくアレンジした数々の料理で“和の食と心”を伝えている。
一般社団法人和食文化国民会議(略称:和食会議)副会長。
しもつかれは栃木県を中心とした、北関東に伝わる郷土料理。鬼おろしで粗くおろした野菜と鮭の頭、大豆、油揚げを鍋で柔らかく煮込み、酒粕の風味を加えた保存食です。昔の農家は、初午は冬を越したばかりで食べ物が乏しい時期でした。そこでお正月の塩鮭や節分の大豆を活用し、初午のお供えとしたのがしもつかれだといわれています。
栃木県の初午は、お赤飯と一緒にしもつかれを稲荷神社に供え、無病息災を祈ります。
地域や家庭によって味が異なり、「7軒の家のしもつかれを食べると病気にならない」という言い伝えがあります。