日本の食文化は、自然との共生であるといわれています。
日本は国土の長さ3,000km、3分の2が山地、そして4つの海流に囲まれた島国です。
春夏秋冬と呼ばれる四季のもとで、野と山と海の幸がもたらす季節の恵みを存分に享受し、楽しむ食文化が発展しました。日本生まれの定食をより一層おいしく味わうために、日本独自の食文化について少し掘り下げてみましょう。
日本独特の地形や四季から生み出される自然の恵み。
日本の食文化は、この豊かな自然そのものを味わうことでもあります。旬の幸を取り入れることで、決して止まることなく移ろい続ける季節の瞬間を料理に表現します。
食材の出始めのころの「走り」、最もおいしい時期の「旬」、盛りを過ぎて旬を懐かしむ「名残」。
四季折々の食材が伝える季節感を楽しむことは日本の食文化のひとつであり、定食にもそのこころは受けつがれているのです。
豊かな自然の恵みを享受する日本の食。日本では自然を敬い、その恵みや命に感謝して食べる食文化を育んできました。日本人は普段食事をする前に「いただきます」、食事を終えた後に「ごちそうさま」という言葉を発します。「いただきます」も「ごちそうさま」も、日本独特の食に対する感謝のこころを述べた言葉です。
古くから日本では、人間は動植物の命をいただくことで成り立っているという考えが受け継がれていきました。動植物の命だけでなく、それを育て収穫し食へと調理した人、全てに感謝する気持ちが「いただきます」という言葉につながっています。食事が終わったときに述べる「ごちそうさま」も同様に感謝の言葉です。
「ご馳走(ごちそう)」とは「亭主があちこち走り回って用意した料理」という意味です。そこに「様」をつけてその料理や料理人への感謝の気持ちを示す食後の挨拶となったといわれています。目の前にある料理に関わった存在すべてに感謝の気持ちをもって料理をいただく。それが日本の食のこころなのです。
日本の長きに渡る歴史のなかで育まれ、様々な食文化を柔軟に取り入れてきた定食は、日本の食文化の魅力が詰まった世界に誇るべき食のひとつといえるでしょう。
「人は誰しも食べたものでできている」という言葉があります。ただ空腹を満たすのではなく、なにをどのように食べるのかを意識することが、活き活きした毎日を作っていくのではないでしょうか。
食卓を彩る自然の恵みに感謝しながら、目でみてよく味わっておいしく食べる。
こうした心も豊かになる食事である定食は、世界中で「いただきます」「ごちそうさま」の声をこれからも増やしていくでしょう。
《ハンバーグ》
ハンバーグはひき肉に玉ねぎやパン粉といったつなぎを混ぜ合わせて捏ね、形を整えて焼く料理です。使う肉やつなぎの種類、焼いた後の味付けによって様々なバリエーションがあります。日本では子どもから大人まで、大変人気の料理です。つなぎに豆腐やおからを使い、ヘルシーに仕上げるハンバーグも注目されています。
《コラム》
ハンバーグが日本に伝わったのは1800年代後半。東京日本橋にある日本最初の料理学校「赤堀割烹教場」の開校式で登場したのが最初といわれています。現代ではさっぱりとした大根おろしをのせた和風ハンバーグや、甘辛い和風のたれで味付けした照り焼きハンバーグなども人気。すっかり日本に浸透した料理といえます。
《サバの味噌煮》
日本に古くからある発酵食品の味噌で煮ることで、サバの旨みを引き出した料理です。味噌がサバを包み、旨味を逃さずふっくらジューシーに仕上げます。こってりとした味噌とサバの脂は相性抜群、ごはんが進みます。味噌でサバがもつ独特の臭みを旨みに変える、魚を知り尽くした日本ならではの料理です。
《コラム》
醤油とともに日本人にはなくてはならない調味料、味噌。地域によって大豆、米、麦など原料が異なり、甘口から辛口まで味の変化に富んでいます。長い間日本全国で食べられてきた、郷土色を色濃く感じさせる調味料です。サバの味噌煮には魚の身の食感を邪魔しない、粒子が細かくて舌触りの良い味噌が向いています。
《すき焼き》
すき焼きは、薄くスライスした肉(主に牛肉)に、野菜や豆腐、白滝などの具材を、醤油、砂糖などの甘辛い調味料で、焼いたり煮たりして食べる鍋料理です。肉を焼いてから、砂糖、醤油で味付けをする関西風と、だしを調合した割り下を使って作る関東風があると言われており、肉も牛肉はもちろんのこと、豚肉、鶏肉、魚でも美味しく頂けます。
《コラム》
すき焼きの由来は、その昔、鍋の代わりに鋤(鉄製の農具の一種)で焼いて作った料理、またすき身の肉を使った料理など諸説ありますが、日本人になじみの深い、代表的な鍋料理の一つです。また、明治時代以降に肉食が解禁され、牛肉の味とともに全国に広がった料理とも言われています。