炊きたての白いごはんを中心に、さまざまな
おかずを組み合わせる和食。私たち日本人は、
昔から米を主食としてきましたが、
世界に目を向けると日本だけでなく、
多くの国でお米が食べられていることがわかります。
品種や栽培方法、調理方法は違っても、全世界で
たくさんの人達が米をつくり、独自の調理法で
おいしく食べています。世界に広がる米について
一緒にみていきましょう。
世界にはいろいろな穀物がありますが、
多く食べられている三大穀物は、とうもろこし、
稲(米)、小麦です。2014年のFAO(国際連合食糧農業機関)
の統計では、それぞれの生産量は約10億3700万トン、
7億4100万トン、7億2900万トンとなっています。
とうもろこしは最も多いのですが、実はこの
生産量の約6割は家畜の餌になっています。
人間が食べているという観点では、米が
世界でNo.1の穀物といえるでしょう。
私たち人間が生きるために欠かせない三大栄養素は、糖質(炭水化物)、タンパク質、脂質です。中でも糖質は、私たちの生命を維持するために必要なエネルギーの源です。
農耕をしなかった狩猟採集の時代は、果物やハチミツ、木の実やイモ類から糖質を摂っていました。この糖の分子が集まってできたものが、米をはじめとする穀類に含まれるデンプンなのです。
日本に暮らす私たちがいまおいしく食べている米は、長い時間をかけて、
改良された稲に実ります。現在、世界各国で栽培されている稲の祖先を
「野生稲」といいます。
いまから約1万年前、中国の長江流域で、野生稲の栽培が始まりました。
野生稲は現在もみることができますが、穂は
小さく種子(米)が少ししかつきません。
さらに少し触れるだけで種子が
地面に落ちてしまいます。
人類の祖先はこの野生稲を改良し、より多く収穫でき、寒さや病気に強く、
おいしい品種を生み出してきました。いま世界で食べられている様々な
品種の米は、この野生稲から派生したものなのです。
日本やアジアだけでなく、中東、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカ、オーストラリアという広い地域で米が栽培され、食べられているのがわかります。
水を貯めずに畑に種子を播いて育てるのが陸稲栽培です。
ラオスでは山の斜面を焼き、棒で穴を開けて稲の種子を播く焼畑が行われています。収穫は年1回、
主にもち米を栽培しています。稲穂を穂ごと刈り取ったり、手ですいたりして籾を収穫します。
米にも種子があります。
米の品種によって、種子の色やかたちは様々です。
もちろん見た目が変われば味も違います。
そこに住む人達の長い間の試行錯誤によって、風土にあった品種が
生み出されてきました。
米にはインディカ米とジャポニカ米があります。ジャポニカ米は日本など温帯のほか、熱帯の山地でも栽培されます。一方インディカ米は熱帯の平地などで栽培されています。米の形は、ずんぐりしたものや細長いものなどいろいろです。また、食感も、ぱさぱさしたものからモチのようにねばねばしたものまでいろいろです。
ジャポニカは丸い米粒でねばねば、インディカは細長い米でぱさぱさといわれますが、かならずしもそうではありません。複雑に進化し、人の手によって改良されてきた米の姿かたちは多様性に満ちています。
水を入れた田んぼで稲を育てるのが水稲栽培です。欧米では、日本よりも1枚が広い水田で大規模栽培を
行っています。日本のように苗を植えるのではなく、種子を水田に直播します。
米の種子は稲となり、稲穂をつくります。私たちは実った米を収穫し、食べています。
種子が育ち、私たちの食卓にやってくるまでには、様々な工程があります。
種子から始まり、順々に姿を変えていく米のことばです。
季節によって洪水で水かさが増す、低湿地帯で育てる稲が浮稲です。徐々に高くなる水かさに応じて、
水面に顔を出そうとする稲の茎は最長5メートルにもなります。
水が引き収穫時になると、稲がおじぎをするようなかたちになります。
世界各国ではいろいろな米が栽培されています。
土地によってつくられる米が異なるように、そこで暮らす人達の
好みも様々です。
アジアでは「香り米」という米が好まれています。
香り米は独特の風味がおいしさの特徴となっています。
香り米には様々な品種がありますが、タイでは
「ホームマリ(通称ジャスミンライス)」が、
インドやパキスタンでは「バスマティ」が
高級品種とされています。
おいしい米といえばコシヒカリだった日本でも、
最近は全国各地で新しい品種が生み出されています。
炊きたてのおいしさだけでなく、「酢飯」「カレー」
「玉子かけごはん」「おむすび」といった用途に合わせた
品種もうまれています。品種改良によって、最近では
北海道のような寒い地域でもおいしい米が
つくられるようになってきました。