日本で本格的な水田稲作が始まったのは約3,000年前といわれています。古代の人たちはどのように米を調理していたのでしょうか。出土する甕(かめ)に炭化米の焦げ跡がついている例も多いことから、米を煮て調理し食べていたことが推測できます。甕の表面についた煤(すす)や焦げの様子、内面のおこげ(炭化米)の痕跡から「湯取り法」や現代の「炊き干し法」に近いかたちで調理されていたと思われます。

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甕に米と水を入れて加熱する。 -
吹きこぼれたタイミングで、湯取りを行う。 -
焚火の上に転がし接地面を変えながら蒸らしを行う。
写真提供:滋賀県立琵琶湖博物館 妹尾裕介
3世紀ごろになると蒸し器(甑/こしき)の原型的土器が出現し、それまでの「煮る」調理に加えて「蒸す」調理がすでに併存していたことが考えられます。但し、その土器の出現頻度や大きさから日常的に使用されたものというより、祭祀など儀礼的な場で使われていたのではと議論されています。その後6世紀になると、「竈(かまど)+長胴甕+甑」の組み合わせの普及により、「蒸す」調理が主体になったと考えられています。奈良時代、山上憶良が筑前に国主として赴任(731年頃)した際に詠んだ「貧窮問答歌」には当時の貧しい庶民の生活の中に甑があることがわかります。この時代には米の調理は「蒸す」のが一般的だったようです。


現代訳:竈には 煙も立たず 甑には くもの巣が張り 飯を炊くことも忘れて
「蒸す」調理が広がった背景には、当時栽培されていたうるち米の品種が「煮る」調理に適した粘り気の弱い品種に加え、新たに粘り気の強い品種が普及していたことが理由の一つとして考えられています。粘りの度合いが違うお米を一緒に「煮る」と水加減の調整は困難になります。(粘り気の多い品種は水が少なめでないと型崩れを起こしますが、粘り気の少ない品種は多めの水が必要です)その点「蒸す」調理であれば、さまざまな粘りの米の品種に対応でき、失敗するリスクがないのです。
うるち米の品種が現代と同じような粘り気の多い品種へと移行が完了した平安時代になると現代の炊飯に繋がる「煮る(炊き干し法)」が普及しはじめます。中世までは一般的に、蒸したお米を「飯(いい)」、水を加えて煮たお米を「粥」と呼んでいました。平安中期になると精白度の高い米を煮て調理した「姫飯(ひめいい)」というやわらかいご飯も食べられるようになります。
米の調理方法は、古代の「煮る(湯取り法/炊き干し法)」からはじまり、古墳時代以降「蒸す」が普及した形跡がみられ、平安時代になるとまた「煮る(炊き干し法)」が普及しますが、いずれの時代も「煮る」と「蒸す」の二つの調理法は併存しており、米の品種や用途、場面によって使い分けられていたと考えられています。そしてそれが現代にも受け継がれているのです。
平安末期頃つば付きの土器の釜が登場し、鎌倉期以降には土器より熱伝導がよく、壊れにくい鉄製の羽釜も登場し始めます。羽釜は竈にはめ込むことで、釜自体を下からだけでなく横からも効率よく加熱できました。羽釜で米を調理する場合には、少量の水で炊き干した後に、釜の中の蒸気で米を蒸すことで完成させます。
江戸時代になると米の調理方法は従来からあった「炊き干し法」が定着します。それは調理施設である住居内での備え付けの土竈、調理器具である羽釜の普及と共に行われました。江戸時代も後期になると従来はみられなかったぶ厚い蓋をつけた釜が普及します。蓋が分厚く重く作られているのは、釜の内に蒸気を密閉して保つためで、下駄の歯のような蓋の把手(とって)は、高い温度や湿度で板が反るのを防ぐ工夫なのです。
出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)
「はじめチョロチョロ/なかパッパ/ぶつぶつ吹いたら火を引いて/ひと握りのわらもやし/赤子泣いてもふた取るな」もこの頃につくられたもので、私たちが日常使っている自動炊飯器と同じ理屈です。すでに当時からいかにおいしいごはんを炊くかが考えつくされていたのです。
当時の炊飯は一日一度が基本でした。江戸は朝に炊飯し、昼と夜に冷や飯を食べ、上方(京都・大阪)では昼に炊飯し、翌朝はお粥などで食べていました。
自宅から離れて作業をする農民や職人は、ごはんが傷みにくい「湯取り法」で調理をし、弁当などを持参していたようです。「湯取り法」は、沸騰後に粘り気のある白湯を捨てる調理方法なので、ごはんの粘りやつやがなく少しパサパサしますが、夏でも傷みにくいのです。一日中外で作業をする農民にとってはありがたいものでした。
養生訓(福岡藩の貝原益軒によって正徳2年(1712)上梓された健康法の指南書)には、健康状態によってごはんの炊き方まで書かれています。
「炊き干し(普通に炊く)は健康な人にはよく、餴(ふたたびいい:飯のうえに湯を入れて二度炊きする)は胃痙攣で気の滞っている人によい。また、湯取飯(ゆとりいい:水を多くして炊く)は脾胃の弱い人によい。粘って糊のような飯は気をふさいでよくない。」(巻第三 飲食 上)
明治以降ガスや電気が普及すると、明治35年(1902)には日本初の「瓦斯竈(がすかまど)」が登場し、都市部を中心にガスによる炊飯が普及します。大正12年(1923)には電気釜が販売されます。高度経済成長期の昭和30年(1955)に「自動式電気釜(電気炊飯器)」が登場します。その後、昭和47年(1972)には保温できる炊飯ジャー、昭和63年(1988)IH炊飯器が登場します。電気炊飯器が主流になっていく中で、ガス炊飯器は主に業務用、持ち帰り弁当店をはじめ外食中食産業の中で使用されています。
プレナスHP「プレナスお米のこだわり」よりおいしいごはんの鍵は釜の中で起こる対流といわれ、「かに穴」はその証。1300°Cの強い火力でしっかりとした対流を生み出すガス釜炊飯で、粒が際立つおいしいごはんに炊き上げることができる。


IH方式は均等に加熱できふっくら炊きあがる。圧力IHはよりもっちりとした食感に炊きあがる。
一方で手間暇をかけてご飯を調理することも楽しみとする文化も存在します。土鍋で火加減を見ながらガスの火で炊飯したり、キャンプでの炊飯も従来の飯盒でなくさまざまな形状のものが登場しています。IH調理器では炊飯モードのような便利な機能もついているものもあります。かつては「炊飯」そのものが高度な調理技術が必要だった時代から、今ではさまざまな方法で手軽にお米を調理する時代になっています。
「炊飯」という調理工程は、生米のでんぷん(ベータでんぷん)を、適量の水を加えて加熱することで、でんぷんの分子構造をばらばらにし、糊化する(アルファでんぷん化)ことをいいます。「でんぷん」が「アルファ化」することで消化吸収しやすいごはんの状態になるのです。
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1計量
計量カップ(180ml≒150g)にすり切れいっぱいに正確に米の量を量ることが重要です。カップを揺らして詰め込み過ぎてもいけません。
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2洗米
現在は精米技術も格段に進歩しており、米を「とぐ」必要はなく「洗う」だけで十分です。ごみや異物混入、糠の残りの付着があったころはしっかりと「とぐ」必要がありましたが、火力乾燥された米は砕けやすく、そうなると炊飯時にでんぷんが流出し全体の食味に影響します。古米や品質の低下した米は、外側の劣化した部分を「とぐ」ことで取り除くことが有効です。
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3浸漬
米粒の中心までびっしり詰まったでんぷんをきれいにアルファ化するには、炊飯前の浸漬で中心まで水分を吸水させる必要があります。季節や水温によりますが30分から2時間の浸漬がよいとされています。(2時間以上浸漬しても米の吸水率は変わりません) 米の水分量|お米13-15%→浸漬20-25%→ごはん62%前後

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4炊飯(温度上昇期)
加熱にともなう米の吸水とでんぷんの糊化のバランスがよいのは、約10分をかけて沸騰させる加熱速度とされます。

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5炊飯(沸騰期)
釜の中の水分を激しく沸騰させ、米のでんぷん分子をほどいていきます。でんぷんの糊化(アルファ化)が進みます。

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6炊飯(蒸し煮期)
米にほとんどの水が吸収された状態で火を弱め、釜の中の水蒸気を使って100℃近い状態を保ち、焦がさないように加熱を続けます。釜内の温度低下を考慮すると15分程度の時間が適当です。

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7蒸らし
消火後10〜15分程度置くことで、予熱で米の芯が残らずふっくらとなります。溶け出したでんぷんが米粒の周りに再度付着することで適度な粘りや見た目のつやもでます。

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8攪拌
蒸らしは15分以上置くと釜内の冷却が進み、水蒸気が冷やされて水となり、ごはんが水っぽくなるので、蒸らしが終了した時点ですぐに炊飯器の蓋を開け、しゃもじでごはんを混ぜ、余分な水分を飛ばすことが重要です。

米づくりはその当初から政治、経済、文化の中心でした。米は単なる食料でなく、神にささげられるものであり、貨幣として流通手段にもなり、資本にもなったのです。それが江戸期の石高制によって公に完成をみるのです。
庶民にとって換金性の高い米を口にすることができるのは、正月や盆などの歳時行事、冠婚葬祭といったハレの日だけでした。日常的には麦や野菜、芋を混ぜた「糧飯(かてめし)」を食べていました。江戸期には米は都市部に集約されたため、江戸の町民は比較的米を食べることができた(一説には一日五合とも)ようです。
明治期以降は急激な人口の伸びに米の供給が追い付かず、多いときで国内消費の約2割の米を朝鮮や台湾から移入していました。米の需要を供給が上回ったのは昭和30年代後半(1960年代半ば)です。3000年にわたる米作りの歴史において、日本人全員が満足に米を食べることができるようになったのは、ほんの最近のことなのです。






















