私たちが食べているお米は、稲という植物の種子です。収穫された後、ごはんとなって私たちの口に入るまでの間には、いくつかの工程があります。
まずは稲の構造をみてみましょう。収穫されたばかりの稲は固い「籾殻」に守られています。籾殻を取ったものが玄米です。玄米の周りが糠層です。白米にあたる胚乳 (白い部分) と胚芽を糠層が包んでいます。
ごはん茶碗1杯 (150g)あたり
白米は食べやすくおいしいのですが、栄養価では玄米のほうが優れています。これは玄米独特のぼそぼそした食感のもとになる糠層や胚芽に、栄養素(脂質、ミネラル、ビタミン、食物繊維等)が含まれているためです。
糠漬けは、精米するときにでる糠を利用した漬物です。
糠に水と塩を混ぜ、乳酸発酵させた糠床に野菜を漬けます。
糠床の乳酸菌の働きで 香り高くなるだけでなく、漬け込んだ野菜に糠のビタミンやミネラル等が吸収され、栄養価も
高くなります。糠床は毎日かき混ぜることで、乳酸菌が
生き続けます。
この糠漬けが広まったのは精米技術が進み、糠が大量に流通するようになった江戸時代以降です。享保元年(1716)には、糠を専門に扱う糠問屋もあったそうです。
北九州市小倉にある八坂神社の宮司を努められてきた高山家には、約400年に渡って受けつがれてきたといわれる糠床があります。寛永三年 (1626)、八坂神社を創建した初代小倉藩主細川忠興と息子忠利との手紙に糠漬けのやりとりがみられ、細川氏の後、寛永九年 (1632) に小倉に入った小笠原忠真も糠漬けが好物だったとの記録が残っていることから、約400年前には糠漬けが小倉の地で広まっていたことがわかります。
高山家の糠床の中身は、糠、粗塩、昆布、唐辛子、山椒。朝夕と一日二回、手を入れています。神社のお供物の野菜が漬け込まれ、毎日社家の人々の食卓にあがります。こうして新鮮な野菜が絶えず漬け込まれていたことで、元気な糠床が現代まで維持されてきました。
私たちが食べているお米には、どんな栄養素が含まれているのでしょうか。
お米の主な栄養素は「炭水化物」と「たんぱく質」です。お米にたんぱく質と
聞くと驚くかもしれませんが、実は私たち日本人は、お米からも「たんぱく質」を
摂取しているのです。ほかにもお米に含まれる栄養素を見てみましょう。
小麦粉からつくるパンや麺と異なり、「ごはん」は
粒のまま食べる「粒食」です。ごはんを食べると、
体内で炭水化物がでんぷんから糖に分解されるまで
に一定の時間がかかるため、消化吸収が緩やかで血糖値が上がりにくいといわれています。
お米にはたんぱく質も含まれています。
たんぱく質は体内でアミノ酸に分解され、筋肉や
血管、臓器、皮膚の材料となります。私たちが体内で合成できず、毎日食べ物から摂取しなくてはいけない9種類のアミノ酸を「必須アミノ酸」といいます。
お米はこの「必須アミノ酸」を高い割合で含んで
います。
お米のおいしさの定義は、国や地域によって様々です。
日本のように粘り気があるお米をおいしいと感じるところもあれば、
水分の少ないぱらぱらとしたお米を好むところもあります。
ここでは私たち日本人がイメージするお米のおいしさを、
味・見た目・香り・テクスチャー (食感) という4つで見てみましょう。
- お米の味は、その粒の中に凝縮されています。お米は炊くことで、でんぷんが糊化するので、ごはんを口に入れて噛むとほのかな甘味を
感じます。
- 炊き立ての白いごはんは、一粒ひとつぶが艶々と光っています。炊飯時にお米の粒から溶け出したでんぷんが「おねば」となり、お米のまわりを覆います。この「おねば」がごはんに艶と光沢を加えています。
- ご飯の香りはいろいろな香気の複合臭で、代表する特別な成分というのは存在しないようです。また、糠の香りとご飯の香りでは共通の成分がかなり含まれているということがわかっており、ご飯の香りには糠も関係しているようです。
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私たち日本人は、一般的に粘り気のあるごはんを好みます。粘りは米のでんぷんの成分、アミロースとアミロペクチンの割合で決まります。
アミロースの含有率が高いとぱさぱさした食感になります。コシヒカリなどの人気のお米はアミロースの含有量が20%以下です。
※もち米はアミロペクチンがほぼ100%です。
毎日食べるごはんだからこそ、おいしくいただきたいものです。
ここではごはんをおいしくいただくためのヒントをご紹介します。
近年、新しい銘柄のお米が次々とデビューしています。
国内では現在、約280品種がつくられています(2017年3月末時点)。
おいしいお米にこだわるなら、お米屋さんでいろいろな銘柄を購入し、
食べ比べてみてはいかがでしょう。同じお米でも精米方法によって
味わいが変わります。お米屋さんでは三分づき、五分づき、七分づき
など、自分の好みに合わせた精米もできます。
お米は精米すると、時間が経つにつれて味が落ちていきます。
1ヶ月くらいで食べきれる量を買いましょう。購入後は密閉容器に入れ、
冷暗所に保管します。夏は2週間、冬場でも1ヶ月で食べきれる量が
おすすめです。
炊飯は「お米」と「水」だけのシンプルな調理です。おいしく炊くためには、正確な計量がなにより大事です。
市販されているお米はきれいに精米されているため、表面に付着した糠を落とす程度に洗えば十分です。
水の量でごはんの硬さが決まります。米の重量のおよそ1.5倍の水を加えるのが基本です。
水分の多い新米は水量を控えめに、乾燥が進んだ古米は多めにするとよいでしょう。
炊飯時に熱が均等に伝わるように、米粒の中心まで吸水させるのがおいしさの秘訣です。最低でも30分くらい浸漬させます。
※冬期は50〜60分。
お釜の中では3つのプロセスが進みます。お米の粒に含まれるでんぷん質が水と熱の力で糊化されることで、おいしいごはんになります。
- 温度上昇期
- 温度の上昇に伴い米粒がさらに水分を吸収し、でんぷんの糊化が始まります。
- 沸騰期
- 水分が沸騰することで対流が起こり、でんぷんの糊化が進みます。
- 蒸し煮期
- 余分な水分が蒸発し、でんぷんの糊化がさらに進みます。
炊飯後10〜15分置くことで、ご飯粒の表面がおねばをまとって柔らかくなります。中心部も糊化がさらに進み、水分が飛ぶことで粘りが出てきます。
蒸らしが終わったらすぐに炊飯器の蓋を開け、全体を混ぜて余分な水分を飛ばすと、ふっくらとおいしくなります。炊き上がり後そのままにしておくと、釜の内側の水蒸気がごはんに吸収され、水っぽくなるので注意しましょう。
おいしく炊かれたごはんは、でんぷんが十分に糊化しています。
噛めば噛むほど甘みを感じる白いごはん。
よく噛むことはおいしさにつながるだけでなく、消化も助けます。
(だ液の酵素で、でんぷんが分解され甘みを感じます。)
お米の味は、産地や銘柄が同じであっても毎年異なります。
これはお米があくまでも自然からの恵みであることを示しています。天候などに大きく左右される
米づくりは、常に同じ味になる保証はありません。さらに収穫したお米はその後だんだんと味が
変化していきます。
そこで同じおいしさにするために「ブレンドの技」があります。
いろいろな地域のお米の性質を知り、それらをブレンドすることで、1年を通じて
同じおいしさを生み出すことができます。大量にお米を使う外食チェーンやケータリングでも、
全国で収穫されたお米の品質を常にチェックし、独自のノウハウでブレンドすることで、
おいしいごはんを安定して提供しています。「いつ食べてもおいしい」お米には、
プロの技が込められているのです。