古くより日本人は、海外からの食文化受容と積極的に向き合い、
自分たちの嗜好にあったスタイルへの洗練に努めてきました。
平安時代には、大陸由来の大饗料理が貴族の饗応料理として定着。
さらに鎌倉時代には、留学僧たちの尽力により、茶を嗜む習慣の普及とともに、
寺院の精進料理が発達するなど、日本食発展のかげにはいつも異国の食文化に真摯に
学ぶ先人たちのまなざしがありました。
室町・安土桃山時代には、南蛮人たちの来日を機に、カステラやボウロ、
テンプラなどのヨーロッパの食文化と出逢うこととなります。
江戸初期に鎖国が始まると、西洋諸国との交流は
長崎の出島に限定されましたが、それでもなお好奇心旺盛な
日本人は、居住が許されたオランダ人や中国人らの食文化を
柔軟に受け入れ、日本の食材や調味料で調理し、味わうことを
楽しみました。
そして開国を迎え、西洋に範を求めた近代国家づくりが始まります。
西洋人との交流が深まるにともない、西洋料理を提供する飲食店も増加。
西洋諸国の調味料や食材も徐々に社会に浸透し、日本人好みにアレンジされた
「洋食」を味わう風潮も高まりを見せていくこととなりました。
私たちがノスタルジーを感じる「洋食」誕生の裏側には、
どんな物語があるのでしょうか?
本特集では、江戸時代から明治・大正時代にかけての
時期に焦点をあて、試行錯誤を繰り返しながらも、果敢に異文化受容に挑んだ
先人たちの努力の軌跡を追います。