「スマート農業による米づくりへの挑戦~事業性と社会性の両立を目指して~」オンラインイベントを開催

2023.09.20

日本の米文化を守っていく プレナス米文化継承活動

当社は日本のおいしいお米を世界に広げるため、2021年2月より米づくりに取り組んでいます。日本の米消費は、人口減少や食の多様化・西洋化の影響で、ピーク時の半分にまで減少しています。また、農業従事者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増加もあり、生産量が減り続けています。

これらの課題解決の一助となるよう、当社はスマート農業を取り入れた生産性の高い米づくり事業への挑戦を始めました。この事業について、アグリビジネス推進室の佐々木哲也をゲストに迎え、「スマート農業による米づくりへの挑戦~事業性と社会性の両立を目指して~」と題したスペシャルトークを開催しましたので、その様子をご紹介します。

対談者プロフィール

  • 佐々木 哲也アグリビジネス推進室 室長


    2002年プレナス入社。「ほっともっと」営業部で店舗運営やフランチャイズオーナーへの経営指導を担当。店舗オペレーション開発部を経て、2021 年から自社で米づくりを行うため新設したアグリビジネス推進室の室長に就任。

  • 八谷 中大Plenus米食文化研究所 所長


    1996年プレナス入社。営業部、商品開発部、マーケティング部を経て、2017年からPlenus米食文化研究所に従事し、「米」にまつわるさまざまな生活文化や歴史、美しい日本の食文化の研究、発信活動に携わる。

「スマート農業による米づくりへの挑戦~事業性と社会性の両立を目指して~」

米づくり事業立ち上げの背景

佐々木
日本の農業人口は、2005年から2020年の15年の間、約40%減少しました。農業従事者の平均年齢は約68歳から70歳に迫るなど高齢化が進んでおり、今後も農業を続ける人々の減少が予想されています。年間4万トンのお米を使用するプレナスにとって、農業を支援する取り組みが必要だとの認識がありました。また、2009年の改正農地法により、企業の農業事業への参入が容易になっていた背景もあって、2年前に米づくり事業を始めました。

各ファームの紹介

八谷
農業自体の環境は厳しいものがあったけれども、農業事業への参入のハードルは下がっていて、プレナスにとって良い機会になったということですね。それでは各ファーム(農場)の紹介をお願いします。

佐々木
2年前(2021)に初めて埼玉県の加須市に「埼玉加須ファーム」を開設しました。 今年の作付面積が約18ha(ヘクタール)です。埼玉県の推奨品種「彩のきずな」「にじのきらめき」を栽培し、スタッフが4名で運営しています。2022年には、山形県の庄内平野で「庄内三川ファーム」という2番目の農場を開設。今年の作付面積が約5 ha、「はえぬき」という品種を栽培し、2名のスタッフが常駐し運営しています。そして今年(2023)から九州の大分県に3番目の農場として、宇佐市に「大分宇佐ファーム」を開設しています。

佐々木
初年度から15ha、九州の代表的な銘柄「ヒノヒカリ」と「にこまる」という品種を栽培しています。これらのファームでは、全てプレナスの社員で運営しております。彼らは全く農業経験がなく、人事異動でこのアグリビジネス推進室に配属されて、今までやってきた業務と全く違う農業という仕事に取り組んでいるというのが現状です。 

 

生産性の高い米づくりを目指して

佐々木
まず春先のメインイベントの田植えですが、日本の一般的な手法が「移植栽培」です。ビニールハウスの中の苗箱で苗を育て、田植えのときに手作業で苗箱をトラックに積み込んで、それを田んぼまで運んでいく。そして苗箱を田植え機に一つ一つ載せ替えて、初めて田植え機で田植えができるようになります。「移植栽培」を行うための苗づくりには時間と労力だけではなく、保管スペース、ビニールハウスという場所、資材、そういったものにもコストがかかるのが現状です。

 

佐々木
その課題解決のため、私たちは苗づくりをしなくてよい「直播(ちょくは)栽培」に取り組んでいます。「直播栽培」には二つのやり方があり、一つは、ドローンに種籾を積んで、水を張った田んぼに直接まいていく「湛水直播栽培」。もう一つは乾いた田んぼにトラクターで種籾をまいて、それで育てていく「乾田直播栽培」です。「直播栽培」を採用した理由ですが、できるだけコストを抑えた生産性の高い米づくり事業を確立するためです。先の苗作りにかかる作業時間、資材コストを削減し、少人数で大規模な米づくりを行うため「直播栽培」へチャレンジしています。

スマート農業の活用

八谷

その他にも様々な生産性を高めるための取り組みをやっているとのことですが、お話をお願いできますか。

佐々木
技術も知識も経験もない中で始めていますので、熟練の農家さんにどうやって追いつけるだろうかと考えた時に、私たちはスマート農業に目を向けました。ベテランの農家さんの目、手、それと頭をスマート農業技術で置き換えられないかと思って積極的に取り入れています。

代表的なのはドローンです。これは作業負荷の軽減のため、いろいろな作業で使っています。種まきの作業や、追肥と言って肥料をまく作業にも使います。また、空撮用のドローンを使って田んぼを上から撮影して、それを葉色解析サービス※1に通すことで、葉っぱの色がどういう状態なのかが分かります。ベテランの農家さんは目で見て分かりますが、我々は正直わからないんですよ。こういったサービスを使うことによって葉色が可視化され色の薄い部分だけに肥料を撒いたりとか、無駄な肥料を使わないようにすることにも繋がります。

※1ドローンの画像をWeb上にあげるだけで農作物の生育状況を解析・診断するクラウド型圃場管理サービスです。

農業における地域社会との関係

八谷
事業として、生産性の高い米づくりの取り組みについてお話しいただきましたが、地域社会との関係、社会性についてお話をお聞かせください。

佐々木
農業をやるにあたって、地域社会との関係性づくりは一番大事だと考えています。農業をすると地域の方々とのつながりの中で作業が発生します。田んぼを管理するのは自分たちですが、それを取り巻く水路は地域の皆様と共同で管理したり、周辺の草刈りをしたり、できるだけその地域の皆様と一緒に活動をし、積極的に交流を深めています。
また、地域には農業委員※2さんという方が必ずいらっしゃいますので、その方とこまめに情報交換をすることも積極的にやっています。後は、地域の子ども食堂へお米を寄付させていただいたり、地元の夏祭りへの協賛やお手伝いさせていただいたりなど、さまざまな活動を通じて地域とのつながりを深めています。

※2農業委員会:農地法に基づく売買・貸借の許可、農地転用案件への意見具申、遊休農地の調査・指導などを中心に農地に関する事務を執行する行政委員会として市町村に設置されています。

八谷 
今日のスペシャルトークは、「スマート農業による米づくりの挑戦~事業性と社会性の両立を目指して~」と題して、アグリビジネス推進室の佐々木哲也と話をしました。年間4万トンものお米を使うプレナスとして、米づくりに取り組むことは、自社の事業のリスクヘッジやコスト削減の意味合いだけでなく、地域社会にとっての基幹産業である農業を守ることにもつながるかと思います。そして、長年お世話になったお米業界への恩返しの意味合いもあるかと思います。

 

参加者からコメントをいただきました

オンラインイベントの参加者から、これらの取り組みに対するご意見を賜りましたので、その一部をご紹介します。

◇米文化を大事にしながら取り組んでおられること。米が日本の精神文化の根幹をなしている事は、大事なことだと思います。

◇ビジネスライクだけではない取り組みに期待しています。

◇チャレンジャーな企業だなと感じました。

◇今後も継続的に米づくりに取り組んで頂きたいと思います。

◇米にとどまらず、他の食材についても取り組んでもらいたいと期待しています。

◇(農業従事者から)農業後継者がいないので規模拡大に二の足をふんでいますが、今後は法人化等も検討し、事業計画をたてて頑張ってみます。

今回はプレナスの農業事業の紹介でしたが、実際に米づくりを行うことはプレナスの事業利益の面だけでなく、地域の基幹産業である農業を支える社会性の意味合いの大きい事業です。当社の農業事業はたくさんの方々の助けを借りて行っており、彼ら関係者の期待は大変高いものです。

そもそも国内の米づくり、そして稲作文化が健全に維持されていないと、米文化継承活動自体も成立することはできません。現地で真摯に農業に取り組むアグリビジネス推進室のメンバーを同じプレナス社員として大変頼もしく思います。

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