米食文化の未来を創る

約三千年という米づくりの歴史とともに、
米は日本の食の中心となり、日本の米文化を支えてきました。

ところがここ50年という短い期間において、
食の欧米化や多様化によって米の消費はピークの半分に減り、
日本の食文化は大きく変わりつつあります。
消費量の減少に加え、生産者の高齢化によって、
棚田をはじめとする国内の水田面積は減りつつあります。

米づくりと米食が減り続ける今の状況は、
長い歴史の中で育まれてきた日本の食文化の危機といえるでしょう。
食事の中で米の存在感が薄くなるにつれ、
日本の食文化が忘れられ、伝統の継承が途切れてしまう恐れが生じます。

その一方で、いま海外では日本食が注目されています。
日本食は健康的だと称され、多くの国で和食が広がりを見せています。

日本の食文化の中心を担う米、それを生みだす場が水田です。
青々とした稲や黄金色にたなびく稲穂がどこまでも続く水田の風景に、
どこか懐かしさを感じる人は多いのではないでしょうか。
こうした日本人の心の原風景、水田を描いた壁画が「棚田の四季」です。

作品には美しい日本の四季の中で、
日本食を支えてきた米が生まれる棚田の風景が描かれています。
作品を眺めていると、約三千年前に稲作が伝わってから、
途切れることなく米をつくり続け、そこで花開いた
豊かな米文化を今につなげてきた先人たちの姿が浮かび上がってきます。

「棚田の四季」を通じて日本人が心の原点に触れることで、
長きに渡って続いてきた日本の米文化の価値を再発見する機会になることを願います。